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東京モータショー2009の空間デザイン その3 [Exhibition]

前回のマツダと、良い意味で対照的だったのがホンダのブース。今回は会場の規模縮小のため2輪と合わせての展示。さまざまなメッセージが空中に浮かぶ広告的なアプローチのプランです。その中心となっているのが、ホンダが自社のDNAと呼ぶ「ないものをつくれ。」というメッセージ。
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空間デザインの明確なルールは、ブランドカラーの赤と白以外は特にありません。代わりこのメッセージが、ホンダのアイデンティティを表現しているといえます。
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ブース奥にあるメインステージも、メインテーマは「ないものをつくれ」。ホンダのものづくりに対する姿勢を、映像とリンクしたパントマイムなどをおりまぜ、演劇のような楽しいステージ演出。
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アシモ君も登場。小さくてわかりづらいですがステージ上の女性が乗っているのが、今回のコンセプトモデルである電動一輪車。アシモの姿勢制御技術を応用し、搭乗はもちろん自立、自走もする驚きのプロダクト。まさに「ないものをつくる」のメッセージを裏切らない独自の製品が紹介されていきます。その後も電動カブや往年の名車N360を思わせるEVなど、ホンダを象徴するようなプロダクトが次々と登場。「はじめにプロダクトありき」というブランドの姿勢が伝わってきます。
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環境問題や景気後退の影響で、今後自動車は、ますます家電のような身近なツールになっていくと考えられ、そのような「日常の延長線上の未来」を感じさせる演出やトーンは、AppleやGoogleに通じるものがあると感じました。
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東京モータショー2009の空間デザイン その2 [Exhibition]

今回も引き続き東京モータショー2009の空間デザインについて。前回は、ブランドアイデンティティのブースデザインへの反映について書きましたが、私から見てそれが成功していると感じた空間がマツダでした。
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数年前Zoom Zoomという軽快で印象的な音楽に乗せたCMが流れていたのを覚えている人も多いと思いますが、そのころマツダは、グローバルのブランド戦略として、ブランドシンボルをリニューアルし、新しいブランドアイデンティティを導入しました。そのブランドステートメントとなったのが、現在も使われいるこの"ZoomZoom"です。ステートメントについては現在もブランドサイトがありますので詳細は省きますが、一見、キャンペーンのキャッチコピーのような軽さを持ちながら、明解なメッセージを内包するこのステートメントに合わせ、グラフィックにブランドシンボルの背景にも使用されている、菱形を伸ばしたようなアイデンティティエレメントを導入しました。新しいブランドコンセプトが持つ心が躍るような躍動感をそのまま形にしたようなこのエレメントは、ステートメント同様、自動車メーカーのCI要素としては少々軽い印象がありますが、写真からも解るように(撮影の腕が悪くちょっと見づらいですが)空間に徹底して導入することで、ダイナミックな空間と、強い独自性を生み出しています。表現の強さと独自性は、展示会の空間デザインに必要不可欠な要素ですが、空間デザインによるブランディングには、それに加えて、ブランドコンセプトとの一貫性が重要なポイントとなります。

自動車メーカーであるマツダにとっては、何よりまずクルマが優先するのはもちろんですが、事実マツダのクルマもこの"Zoom Zoom"を感じさせるプロダクトとなっており、ブランドコンセプトをコアに、プロダクト、コミュニケーション、空間デザインに一貫したアイデンティティを与え、それらを継続的にマネージメントしていくことでマツダは、ブランディングの目的であるユーザへの企業意思の浸透と、ブランドロイヤルティの獲得を目指しており、それらはすでに達成されつつあるように思えます。すっきりとして迷いの無い明解な空間デザインからは、その自信が感じられます。

東京モーターショー2009の空間デザイン その1 [Exhibition]

空間デザインを軸に、ブランディングの視点を交えていろいろ書いていこうと思います。第一日目は先日見に行ってきた、東京モータショー2009について。
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すでに多くのメディアでも報道されているように、今年の東京モーターショーは、世界的な景気後退の影響から、例年と比較して規模が大幅に縮小し、海外の主要自動車メーカーが出展を見送るなど、近年例の無い寂しい展示会となりました。出展メーカーも、コスト削減のため展示製品を減らし、ブースデザインを簡素化するなどその影響がブースに色濃く反映されていました。
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個人的に一番その影響を感じたのはTOYOTA/LEXUSブース。前回のブースは、空間デザイナーに、業界ではすでに世界的に著名なインテリアデザイナーの吉岡徳仁さんを起用し、豪華で煌びやかな空間を実現させていましたが、今回は一気にグレードダウンした印象。
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話題のレクサスのLFAも、ステージに展示されるのみで特別な演出は無し。モーターショーではおなじみのターンテーブルもありません。
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3500万円する車にしてはあっさりした展示dと思ったら、奥のLFAアートギャラリーに原寸大のガラス製のオブジェが展示してありました。非常にお金がかかっていて美しいのですが、車の魅力が伝わってくるかというと少々疑問。
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TOYOTAブースのメインテーマはやはりエコ。HVとEVをメインとした構成です。ブースデザインは、動植物のシルエットをサブグラフィックにして自然を表現しています。展示会のブースデザインでは、出展テーマに合わせたグラフィックやステートメントを使用することが多いのですが、ブランドの視点から見るとこれらは、使い方によってはブランドのアイデンティティを弱めてしまう可能性があります。そのためTOYOTAのような大企業になると、ブランドシンボルやロゴ、ブランドカラーやトーン&マナーのような、デザイン表現をする上での規定を設けていることが多いのですが、展示会のブースデザインに細かい規定を設けることは稀で、そのデザインはそのつど起用するデザイナーや広告代理店のクリエイティブに左右されることが多く、ブランドアイデンティティに基づいたデザイン決定の仕組みは曖昧となっているのが現状です。その理由としてまず、展示会というものが時流に左右されやすい性質であることが言えます。また、日本企業の場合、広告代理店が各種メディアを一括して請け負うケースが多く、その時々のキャンペーンが出展テーマやクリエイティブに反映されやすい状況があります。もちろんマーケットを視野に入れたブース作りはビジネス上重要なことなのですが、海外、特にヨーロッパの主要な自動車メーカーのブースデザインを見ると、その時々のテーマがあったとしても、全体の表現は一貫してそのブランドらしさを体現しているメーカーがほとんどです。これは、ブランドマネージメント、特にグローバルでのブランド戦略に対するヨーロッパと日本、それぞれの企業の取り組みの差がブースデザインにも現れていると言えるでしょう。

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