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Abercrombie&Fitch(アバクロンビー&フィッチ)銀座店 [雑記]

昨日たまたま銀座に行ったら、ちょうどアバクロのお店がオープンしていました。平日にもかかわらず、3時頃から店の前に行列ができ始め、4時を回った頃には長蛇の列。マクドナルドのクオーターパウンダーキャンペーンのようにサクラか?と思いましたが、どうなんでしょう。
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入り口から見ると暗い店内に怪しげなフォトメージが。ニュースによると、店内は服の色も確認できないぐらい暗いとか。建築の外装は黒いサッシュによるシンプルなカーテンウォール。ガラス面は、全てウッドブラインドのようなルーバーで塞がれており、中の様子をうかがうことはできませんでした。
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トラック広告がクラブミュージックを流しながら周回してました。グローバルでこのようなセクシャルなイメージを全面に出した広告戦略をとっているアバクロ。日本では果たしてどう受けとめられるんだろう。
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自動車ディーラーの店舗戦略・デザインについて [カーディーラー]

世界的な景気後退により自動車の販売が低迷しています。とくに国内では、円高の影響に加えて、若い世代のクルマ離れがメーカーにとって深刻な問題となっています。様々な問題を抱えている日本の自動車産業ですが、その一方で、ヨーロッパのメーカーには、巧みな経営・ブランド戦略により、厳しい経済情勢の中、好調な業績をあげているメーカーもあるようです。

日本のメーカーでは、レクサスがグローバルプレミアムブランドとして成功を納めたましたが、今後国内メーカーはマスターブランドを世界の中でどのように位置づけていくかが鍵になると思います。その中でも現在、各社が本格的な市場投入を発表しているEVは特に重要な存在になっていくのではないでしょうか。

ここからは個人的な考えになりますが、今後自動車は、より道具のような身近な存在になっていくだろうと思います。EVが普及し燃料エンジン車より安価で便利になれば、よりその傾向は強まるでしょう。一方需要は縮小するとしても、ステータスの表現や趣味のツールとしての自動車の側面も、依然として残ると思います。こうした市場の変化に伴い、メーカーの販売戦略やブランド戦略もこれからは変化していくと思われます。

現在新車は、メーカーの系列会社が運営するカーディーラーが主な販売窓口になっていますが、今後インターネットでの直接購入も増えていくことが予想されます。とはいえ、比較的高価な耐久消費財である自動車は、最終的に購入を決断するためにはやはり、実物を自分の目で見て確かめることになるでしょう。しかしカーディーラーはロードサイドに多く展開してるため、休日などあらかじめ日を決めていないとなかなか行きづらい。もしカーディーラーが人が集まる駅前や商業施設にあれば、買い物ついや仕事帰りちょっと立ち寄るということもしやすくなるのではないでしょうか。顧客接点が増えれば、ユーザーはクルマの存在をより身近に感じるようになるだろうし、メーカーにとっても、より効果的にマーケティングが期待できます。そうなると、他の小売店と同じように、店舗デザインも重要な要素となるでしょう。ブランドイメージを打ち出し、気軽に立ち寄って見たいと思わせるお店づくりや、ユーザーにとって価値のあるサービスの提供が重要になると思います。収益性やスペースの都合などクリアしなければならない問題は多々あると思いますが、市場に合わせた店舗戦略でブランドバリューを生み出す方法は、まだまだたくさんあるような気がします。系列会社による販売はブランドの統制がしやすいことが強みなので、それを生かしたカーディーラーがあってもいいのではと思います。もちろん商品力は大前提になるでしょう。

アップルストアのブランド戦略 [空間デザインによるブランディング]

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Apple store/アップルストアは、アップルが世界の主要都市に展開しているアップル直営の店舗で、国内では銀座をはじめとして主要都市に展開しています。アップルストアの名が示す通りマーケティング上は販売拠点の役割を果たしていますが、店舗の機能やデザインを見ていくと、一般的な小売店とは根本的に異なるコンセプトのもとにつくられていることがわかります。今回はアップルストアの機能とデザインをひとつひとつ見ていくことで、アップルがこの店舗で目指ざすものを探ってみようと思います。

1.外観
アルミのパネルとガラスで覆われたシンプルな外観は、アップルの製品が持つ品質感と連動し、人目を引く独自の外観となっています。外観のデザインによって、独自のブランドの世界観を見る人に印象づけています。

2.ショーウィンドウ
その時々のキャンペーンを、インパクトのあるビジュアルや展示で訴求し、通りを歩く人々の目を引きつけています。店頭からは、大きなガラス面と最小限に納められたサッシュによって店内の様子をよくうかがうことができ、店舗の前を通る人を中に誘引します。アメリカのある調査会社の報告によると、アップルストアから7.5m以内を歩く人の27%は、店舗に足を踏み入れるというデータがあります。

3.1階売り場
道路に面した一階は、広々とした店内に、新製品を始めとしてアップルの全製品が美しく展示され、全て操作ができるようになっています。これには、アップルに少しでも興味がある人に、まずは製品を体験してもらいたいという意図があるほか、購入を検討しているユーザーに購買意思の決定を促すという狙いがあります。さらに、自分の部屋でアップルの製品を使うことをイメージしてもらえるように、製品の展示台は、あえて木製のダイニングテーブルのようなデザインとなっています。アップルはこれらを戦略的なMDとしてBuying Experience(購買体験)と呼んでいます。

4.Genius Bar
アップルストアにはジーニアス・バーと呼ばれる対面式のサポート窓口があります。一見バーカウンターのような相談カウンターには、特別なトレーニングを受けた専任のスタッフが配置されています。カジュアルなTシャツのユニフォームを着たスタッフによる明るい接客は、ブランドのもつカジュアルな側面を伝えており、これは「人」をブランドの象徴とするマネジメント戦略とも言えます。日本ではバーカウンターは海外ほどカジュアルなイメージはありませんが、このカウンターに限らず、デザインや機能をあえてローカライズしない、ということもアップルのブランドがもつ特徴のひとつです。

5.Theater
アップルストアにはTheaterと呼ばれる、大画面スクリーンと客席を備えた映画館のようなフロアがあります。ここでは製品のデモンストレーションや、ユーザーのミーティングが行われます。アップルの製品への理解を深めたり、同じ目的を持ったユーザーグループを形成するなど、ブランドロイヤルティ獲得のための様々なコンテンツを生み出すハードウェアの仕掛けとなっています。

6.コンテンツ
アップルストアでは、キャンペーンと連動したイベントや、無料のライブイベント、ワークショップが定期的に開催されています。また、建築計画にはそのためのスペースがあらかじめ盛込まれています。

細かいところを見ていくとまだまだたくさん書きたいことがありますが、これらを見ただけでもアップルストアが単なる小売店の枠でくくりきれないことがよくわかると思います。アップルストアの店舗の考え方は、店舗における直接的な売り上げを目標とするよりもむしろ、店舗の生み出す価値によって、ブランドとユーザーをどのようにつないでいくかというところにフォーカスされています。そのことが結果として、ブランドに利益をもたらすと言う考え方に基づき、店舗展開をブランドおよびマーケティング戦略の一貫として位置づけたうえで、デザインや機能、MDが決定されています。こうして見るとアップルストアは、単なる販売拡大を目的とした小売店ではなく、ブランドを体験する場としてのショールームを兼ねた店舗であり、その展開は店舗によるブランド戦略であると言うことができます。

ブランドから見たショールームのデザイン その1 [ショールーム]

ブランドの視点から見たショールームのデザインについて書いてみようと思います。
ショールームは、企業が自社の製品や事業をエンドユーザーやビジネスユーザーに紹介するために、自社の建物やテナントを使用して展示・陳列した空間です。ショールームの機能は、マーケティング上の役割によって大きく二つに分けられます。ひとつは、家具やインテリアのように販売機能を持った店舗としてのショールームで、この場合、実物を展示することで、ユーザーの購買意思の決定を促す役割を果たしています。一方、BtoB系の企業や、直販をしないメーカーなどが設けるショールームは販売機能を持たないことが多く、自社の製品や事業の紹介にとどまり、店舗のように利益を上げることは前提としていません。

ただし、どちらの場合においても、ショールームがマーケティングおよびブランド戦略上の顧客接点として位置づけられることは共通しています。特に後者の場合、ショールームが直接的な利益を生み出さない分、企業およびブランドにとってどのような価値を生み出していくのかを、よく考えて計画することが重要だと思います。

デザインにおける主観の問題 [雑記]

先日、NHKのプロフェッショナル仕事の流儀という番組で、インテリアデザイナーの片山正通さんが取り上げられていました。片山正通さんは、ユニクロのロンドンやニューヨークの旗艦店やフランスのColetteのほか最近ではNIKE原宿ストアを手がけるなど、国内外問わず有名ブランドからの依頼が増えている売れっ子デザイナーです。自分も、今のように有名になる前からずっと好きなデザイナーのひとりで、通常あまり公開されることが無いデザイナーの仕事ぶりが見られるということで、とても興味深く見ました。

番組の中では、ひたすらデザインに悩む片山さんの姿が印象的に映し出されていましたが、有名人になってもデザインを考えるのは大変なんだなあと思うと同時に、同じデザイナーとして共感する部分も多々ありました。デザインに対する自身の考えをいろいろ語っていましたが、その中でも印象的な言葉が「クライアントの思いを実現し、商品の良さを客に伝える」というものでした。クライアントの思い=ブランドの理念、商品の良さ=提供価値とすれば、片山さんのデザインへの取り組み方は、デザインによるブランディングということもでき、それをかなり自覚的にやっていることがわかりました。

ところで、感覚的な事柄を扱うデザインにおいて、個人の主観というのは難しい問題です。特にブランディングにおけるデザインの目的は、ブランドの提供する価値を主体の意図したとおりにユーザーに伝えていくことであるため、ブランドコンセプトに沿ったデザインを、独自性や差別性を加えながらできるだけ客観的な視点で考えることが必要になります。しかし、デザイナーも人間なので、いくら客観的になろうとしても、自分の主観や好みが少なからず入ってしまうこともあります。逆にそれがうまく働くことによってブランドに独自性を与えることもあるし、客観性にこだわるあまり、平凡なものになり、差別化がはかれなくなることもあるでしょう。そしてなによりも難しいのが、それを受け取るクライアントやユーザーもやはり同じ人間であるということです。あたりまえですが、人の感覚は千差万別で「こう感じて欲しい」と強制することはできません。一流デザイナーとはいえ、人間の感覚という不確定要素に対して最適解を出すのは難しい仕事なのだと、この番組を見て思いました。

IFFT2009に行ってきました その3  [デザイン一般]

いちおう空間デザインのブログなので、気になったデザインのブースを。こちら、資材置き場ではありません。ノルウェーのstokkeaustadというデザイン会社のブース。
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コストの都合か、職人さんを入れられなかったのでしょうか、だったら梱包したまま置いてしまえという逆転の発想。コードリールが無造作に置かれてたり、手動フォークリフトに段ボールがそのまま乗ってたりしますが、もちろん演出。製品カタログは新聞紙のように大きく、紙管のケースに入れて持ち帰ってもらうというアイデア。クールです。しかし持ちづらいです。全てがよく考えられていて個人的にはベスト1ブースでしたが、いかんせん地味なためほとんどの来場者がスルー。もったいないなぁ。R0012211.JPG

何やら平べったい箱が浮いてます。
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箱の下には、頭が入るくらいの穴が。もぐらたたきのもぐらのように穴から顔を出すと、こんな世界が広がっています。
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国内外で活躍するデザイナー佐藤オオキさん率いるNENDOのブース。
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スタジオ用のライトを、商品を照らすスポット兼ブース造作として流用しています。面白いアイデアです。肝心の商品はあまり目立ってなかったですが、空間デザインも含めて作品ということでしょう。裏はこんな感じになってます。
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DMによる招待客が多いとはいえ、出展社数も商品も多いこの手の展示会でバイヤーやプレスの目に止めてもらうには、まずはブースデザインで目を引き入ってみたいと思わせることが重要です。その上で製品がより良く見えるような展示の工夫が必要でしょう。ところで、写真撮影禁止のブースがいくつかありましたが、このようにブログで紹介されたりすることも想定したら自由に撮影してもらったほうが良いのでは・・・まあ、あまりこのブログはPRになっていませんが。



IFFT2009に行ってきました その2 [デザイン一般]

前回に引き続きIFFTのレポート。個人的に今回は家具よりも細かいプロダクトのほうに関心がありました。こちらは、果物の緩衝材として使用されているネットを流用した容器。地味です。しかし、こういう日常の目線からの発想が好きだったりします。
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ハーズ実験デザインの一見デザイン家具のような脚立です。こんな地味なモノをデザインしよう、という心意気が好きです。個人的にはアルミアルマイトのバリエーションがあっても良いのではと思いました。
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建築家、黒川雅之さんがプロデュースするプロダクトのつまみシリーズです。引き出しなんかにつけるやつです。黒川さんのプロダクトはGOMシリーズが有名ですが、こちらはシリコン製。滑りにくい素材だからこそ可能なシンプルなデザイン。
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同じく黒川さんの、生コルクを表面に貼付けた小物入れ。私たちが普段目にするコルクは、チップ状に砕いて成形したものですが、これはそのままのコルクを表面に貼っていて安っぽさが無く、温かい独自の風合いがいい感じ。ちなみにコルクはコルク樫という木の樹皮で、水をほとんど通さない性質からワインの栓に使われるのだそう。そういえば昔、ビールやサイダーの王冠の裏にコルクが貼ってあったのを思い出しました。歳がばれる・・・
>>その3へ続く
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IFFT2009に行ってきました その1 [デザイン一般]

国際展示場で本日から開催されている、IFFT2009(インテリアライフスタイルリビング)に行ってきました。
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IFFTはインテリア関係のバイヤーやマーチャンダイザーを主なターゲットとした見本市。家具、テーブルウェア、雑貨、テキスタイルなど、国内外から多数のインテリア関連メーカーが出展しています。その中で気になったものをいくつか。これはCONDE HOUSE(カンディハウス)という旭川にある家具メーカーの新製品。カラフルな木製のスタッキングチェアです。写真ではわかりませんが、木目がはっきりと浮き出ていて色もきれいでした。
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こちらはモダンな桐のチェスト。伝統的な素材もデザインを変えるとずいぶん印象が変わります。
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こんな風に開きます。
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家具以外もいろいろな製品がありました。これは伝統工芸である籐細工の手提げバッグ。鞄代わりに使われている紙袋からヒントを得たそうです。これも写真では伝わりにくいですが、形が非常にきれいでした。ここ数年のインテリア業界のトレンドとして、このような日本の伝統工芸や地場産業の製品を、今のライフスタイルにあわせたデザインで甦らせるという動きがあります。国産の良い製品を紹介したり、ジャパンブランドとして国内外に発信することで、中小企業や伝統産業を活性化していこうという試みです。
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こちらはプロダクトデザイナーの川崎和男さんのデザインによる杖。高齢者におしゃれをしてもらいたいと言う思いから、樫や黒檀といった国産の高級木材を使用し、とても美しく仕上げられています。ちなみに黒檀で8万円だそう。盗難が少々心配。
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独自な形状をした柄はとても握りやすくできています。杖の先端には特殊な形状のゴムがついており、滑りにくい工夫がされています。柄の部分には有田焼の装飾があしらわれていますが、この良さを本当に理解するにはまだ自分は若いのかもしれません。ともかく、高齢化社会で、デザインができることはまだまだたくさんありそうだなと思わせる製品でした。
>>その2へ続く

地域と共生するブランドづくり その1 [ブランディング一般]

前回、地域と共生するブランドのあり方と書きましたが、自分自身そのようなことを真剣に考えたことが無いので、ここで少し考えてみたいと思います。

飲食店や物販店のデザインのパッケージ化によって、どの店舗でも同じサービス、商品、体験が提供しやすくなることはすでに述べましたが、多店舗展開をしながら独自の考え方を導入しているブランドの例として、ユニクロと王将を取り上げてみたいと思います。

すでに知られているように、この二つのブランドは、不況の昨今において好調な業績を収めていますが、両者には共通の戦略があります。それは「現場の裁量の重視」です。例えばユニクロでは店内のVMDに対して店長に大きな決定権があります。VMDとは、ヴィジュアルマーチャンダイジングの略で、簡単に言えば、ユーザーの購買の流れに応じた適切なレイアウトするという考え方です。店舗内でのユーザーの興味は、目的の差はあれ、移動に伴う視点変化によって常に変化していきます。その興味をできるだけスムースに促すことで目的の商品に到達しやすくし、結果として購買率を向上させることをVMDは目標としています。

一方、王将では、店長の裁量でメニューのアレンジをすることができます。王将やファミレスなどの大手外食チェーンでは、通常セントラルキッチンを採用しており、食材の調達、調理、加工を一箇所で行い各店舗に配送する仕組みになっています。これは現場での調理を最低限にすることで、安定した品質のメニューを短時間で提供できるシステムですが、王将の場合、餃子の餡やラーメンの麺など主力商品の基本的な食材以外は全て店舗で調理します。さらにそのメニューの味付けやアレンジは、店長の裁量により、地域ごとの土地柄にあわせて変える事が出来るようにしているそうです。

マネジメントの画一化は一定の効果を上げるには有効ですが、店舗を訪れるユーザーひとりひとりのその時々の動向や心の動きは、その場にいてユーザーと直に接することではじめて解ることであり、それをマニュアルにするのは非常に難しいことだといえます。店舗にやってくるユーザーの心をつかんでこそといういわば商売の基本を、この二つのブランドは良く理解しており、そのことが成功の要因のひとつとなっているのだと思います。

「地域と共生」と冠してみたものの、今回はあまり深く踏み込むことは出来ませんでした。また、今回はデザインから離れてしまいましたが、このテーマはデザインの視点からまた書いてみようと思います。
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Appleにみる「欲求」のデザイン [デザイン一般]

今回はブランドから少しはなれて、Appleのものづくりについて書いて見たいと思います。周知のようにAppleはさまざまな革新的なプロダクトを世に送り出して、私たちを驚かせているブランドですが、なぜここまでAppleはユーザーに支持されるのか。その理由のひとつは、「欲求」のデザインにあると思います。

ここで言う「欲求」とは、何かをしたい、と思うきっかけとなる心の状態とします。わかりやすく言うとドラえもんの歌の「あんなこといいな、できたらいいな」という心理状態です。Appleのプロダクトは、まさにこの部分にぴったりとはまるプロダクトを、戦略的に生み出しているのではないかと思います。

景気の良い時には、人々は「欲望」する対象を求めます。「欲望」が、今さしあたって必要は無いが、目の前に出されることによって喚起される「ああ、これいいかも」「欲しい」といった感情だとすれば、「欲求」とはもっと日常的で、私たちの心の中にすでにあり、しかし今は無い「何か」を求める気持ち、ではないでしょうか。

例えば携帯電話で通信をしている時、「パソコンのようにインターネットが見られればいいな」と思うのは自然な欲求で、それにぴったりはまるのがiPhoneです。さらにインターネットを見たら、「もっとマウスを使うように自然に見られたらいいな」と思い、iPhoneのインターフェースはそれに答えます。Appleはそのために最新のハードウェアの技術と、高度なプログラミングによるインターフェースを惜しげもなく投入します。私たちはその技術にはじめは驚いても、すぐに慣れてあたりまえのように使いこなすようになります。また、Appleのプロダクトのスタイリングを見てみると、無駄な装飾を極力省くことでどんな環境にも違和感無くスッと馴染むデザインになっています。一言で言うとシンプルなデザインです。しかし、工業製品の生産の知識が少しでもあれば、そのシンプルさの実現のために、過剰とも言える努力を費やしていることを理解するのは難しくないでしょう。そしてそれらを決してユーザーに感じさせることはありません。

このようなプロダクトは、マーケティングをベースとした従来の商品開発の手法からは産まれ得ないものです。Appleのものづくりには、流行や年齢、性別、国籍を超えた、もっと本質的な、「こんなのあったらいいね」という、極めてシンプルで自然なユーザーの欲求に応えるという視点が、商品開発の初期段階から導入されているのはほぼ間違いないと思います。だからこそAppleの製品は多くのユーザーの支持を集めているのではないでしょうか。
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