Appleにみる「欲求」のデザイン [デザイン一般]

今回はブランドから少しはなれて、Appleのものづくりについて書いて見たいと思います。周知のようにAppleはさまざまな革新的なプロダクトを世に送り出して、私たちを驚かせているブランドですが、なぜここまでAppleはユーザーに支持されるのか。その理由のひとつは、「欲求」のデザインにあると思います。

ここで言う「欲求」とは、何かをしたい、と思うきっかけとなる心の状態とします。わかりやすく言うとドラえもんの歌の「あんなこといいな、できたらいいな」という心理状態です。Appleのプロダクトは、まさにこの部分にぴったりとはまるプロダクトを、戦略的に生み出しているのではないかと思います。

景気の良い時には、人々は「欲望」する対象を求めます。「欲望」が、今さしあたって必要は無いが、目の前に出されることによって喚起される「ああ、これいいかも」「欲しい」といった感情だとすれば、「欲求」とはもっと日常的で、私たちの心の中にすでにあり、しかし今は無い「何か」を求める気持ち、ではないでしょうか。

例えば携帯電話で通信をしている時、「パソコンのようにインターネットが見られればいいな」と思うのは自然な欲求で、それにぴったりはまるのがiPhoneです。さらにインターネットを見たら、「もっとマウスを使うように自然に見られたらいいな」と思い、iPhoneのインターフェースはそれに答えます。Appleはそのために最新のハードウェアの技術と、高度なプログラミングによるインターフェースを惜しげもなく投入します。私たちはその技術にはじめは驚いても、すぐに慣れてあたりまえのように使いこなすようになります。また、Appleのプロダクトのスタイリングを見てみると、無駄な装飾を極力省くことでどんな環境にも違和感無くスッと馴染むデザインになっています。一言で言うとシンプルなデザインです。しかし、工業製品の生産の知識が少しでもあれば、そのシンプルさの実現のために、過剰とも言える努力を費やしていることを理解するのは難しくないでしょう。そしてそれらを決してユーザーに感じさせることはありません。

このようなプロダクトは、マーケティングをベースとした従来の商品開発の手法からは産まれ得ないものです。Appleのものづくりには、流行や年齢、性別、国籍を超えた、もっと本質的な、「こんなのあったらいいね」という、極めてシンプルで自然なユーザーの欲求に応えるという視点が、商品開発の初期段階から導入されているのはほぼ間違いないと思います。だからこそAppleの製品は多くのユーザーの支持を集めているのではないでしょうか。
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