空間の体験によるブランディング [空間デザインによるブランディング]

今回はブランドの情緒的価値について、空間デザインの視点からもう少し掘り下げてみます。一般的に情緒的なブランディングとは、言語に頼らずに、主体が意図する印象をターゲットに抱かせることで、独自のブランドイメージをつくっていくことを目標とします。広告やWEBであれば、フォトイメージやグラフィックデザイン、映像などに、一貫したトーンや質、動きを与えることで可能になるのは想像できますが、空間はどうでしょうか。

もちろん空間も、同じように素材や色使いで雰囲気をつくることはできます。しかし、空間がその他の媒体と大きく違うところは、それが3次元であり、ユーザーはその中で、視覚を含めた感覚的な「体験」をすることにより、印象をつくりあげているという点です。そこでは、素材や色のみならず、広さや天井高、照明の雰囲気や外光の採り入れ方など様々な要素が相互に影響し、空間の雰囲気、空気感をつくりあげています。さらにその中で、ユーザーは移動するため、視点移動での印象の変化という要素も加わってきます。

わかりやすくするために、ゴシックの教会を例にとってみます。ゴシックの教会では、高い天井による上昇性の強い空間は見るものを圧倒し、同時に天上の世界を想像させます。その視点の先にはステンドグラスによる神の世界が光となってふりそそぎ、パイプオルガンの音色と相まって、荘厳な印象を与えています。これらは全て、神への畏敬の念という感情を引き起こすために、意図的につくられたものです。少々大げさな例になってしまいましたが、空間の形態や、容積、素材、色彩、光などの操作によって、意図した印象を作り上げる、という点では共通しています。

以上のことから、空間デザインによる情緒的なブランディングとは、空間を構成するあらゆる要素の複合によって、ひとつの全体的な印象を、ユーザーの体験を通してつくり上げることだと言えます。

現在ではCG技術の向上により、ウォークスルーなどの映像で、空間を事前に仮想的に体験ができるようになりましたが、実際の空間では、人は自分の意図しないところで無意識にあらゆる感覚を働かせ、印象として感じ取っていると考えられます。仮想空間の体験の質が、実際の空間の体験の質と決定的に違うと感じるのもそのためでしょう。空間によってできるだけ正確に意図した印象を作り出すためにはやはり、人間の想像力に追うところが大きいと感じます。

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