デザインにおける主観の問題 [雑記]

先日、NHKのプロフェッショナル仕事の流儀という番組で、インテリアデザイナーの片山正通さんが取り上げられていました。片山正通さんは、ユニクロのロンドンやニューヨークの旗艦店やフランスのColetteのほか最近ではNIKE原宿ストアを手がけるなど、国内外問わず有名ブランドからの依頼が増えている売れっ子デザイナーです。自分も、今のように有名になる前からずっと好きなデザイナーのひとりで、通常あまり公開されることが無いデザイナーの仕事ぶりが見られるということで、とても興味深く見ました。

番組の中では、ひたすらデザインに悩む片山さんの姿が印象的に映し出されていましたが、有名人になってもデザインを考えるのは大変なんだなあと思うと同時に、同じデザイナーとして共感する部分も多々ありました。デザインに対する自身の考えをいろいろ語っていましたが、その中でも印象的な言葉が「クライアントの思いを実現し、商品の良さを客に伝える」というものでした。クライアントの思い=ブランドの理念、商品の良さ=提供価値とすれば、片山さんのデザインへの取り組み方は、デザインによるブランディングということもでき、それをかなり自覚的にやっていることがわかりました。

ところで、感覚的な事柄を扱うデザインにおいて、個人の主観というのは難しい問題です。特にブランディングにおけるデザインの目的は、ブランドの提供する価値を主体の意図したとおりにユーザーに伝えていくことであるため、ブランドコンセプトに沿ったデザインを、独自性や差別性を加えながらできるだけ客観的な視点で考えることが必要になります。しかし、デザイナーも人間なので、いくら客観的になろうとしても、自分の主観や好みが少なからず入ってしまうこともあります。逆にそれがうまく働くことによってブランドに独自性を与えることもあるし、客観性にこだわるあまり、平凡なものになり、差別化がはかれなくなることもあるでしょう。そしてなによりも難しいのが、それを受け取るクライアントやユーザーもやはり同じ人間であるということです。あたりまえですが、人の感覚は千差万別で「こう感じて欲しい」と強制することはできません。一流デザイナーとはいえ、人間の感覚という不確定要素に対して最適解を出すのは難しい仕事なのだと、この番組を見て思いました。
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